【すごいぞタマムシ博士③】1500年の時を超え、日韓をタマムシでつないだ奇跡

タマムシ博士の秘密に迫る連載シリーズ第3弾。いよいよ最終回です。

 

タマムシ博士こと芦澤七郎さん。

 

タマムシ博士こと芦澤七郎さん(86)はタマムシ飼育歴30年。長年の飼育経験を経てタマムシの生態を明らかにした他、人口養殖にも成功。また、寿命がつきたタマムシを標本にして保存し、その羽を使って世にも珍しいタマムシアクセサリーを製作販売しています。

 

前回までの記事はこちら  ↓

【すごいぞタマムシ博士①】世界一美しい虫は幸運の虫。30年間タマムシを研究し続けるタマムシ博士に会いに行ってきた

【すごいぞタマムシ博士②】タマムシをひと夏に300羽化! 驚くべき研究の数々とは?

 

 

今回は、タマムシ博士が成し遂げた偉業の話をお送りします。

 

韓国へタマムシを1000匹無償で提供

 

オカムラ

芦澤さん、タマムシを30年育ててきた中で、特に思い出深いことはありますか?

 

タマムシ博士

あそこに写真があるでしょ。

 

玉虫馬具の写真。

 

オカムラ

はい。あれは?

 

タマムシ博士

玉虫馬具といってね、韓国の「皇南大塚(こうなんおおつか)※①」という古墳から出土したタマムシの羽が装飾されている馬の鞍の一部。この写真はその複製品※②本物は保存状態が悪いから、複製品を作って、後世にタマムシ装飾の歴史的な価値を現代に伝えていこうという計画が立ち上がってね。

 

※①…皇南大塚から玉虫馬具が出土したのは1973年のこと。

※②…玉虫馬具複製計画は、慶州国立博物館、慶州文化財研究所、ウルサンMBC(テレビ局)の共同事業で行われた。

 

オカムラ

韓国にもタマムシを装飾に使ったものがあるんですね。

 

タマムシ博士

玉虫馬具は1500年前に作られたもので、日本の「玉虫厨子(たまむしのずし)※③」より100年ぐらい古いと言われてるの。ところが、複製品を作るといっても、韓国にはタマムシが全然いないわけ。

 

※③…玉虫厨子。国宝。タマムシの羽が装飾された仏具を収める入れ物。奈良県の法隆寺所蔵。

 

オカムラ

そうなんですか? どうして韓国にはタマムシがいないんですか?

 

タマムシ博士

タマムシは暖かいところにしか生息しないんだよ。日本でも北海道や青森は寒いからタマムシはいないんだ。韓国は気温が低いからタマムシは希少で数がとても少ないんだ。韓国だとタマムシは天然記念物なんだよ。※④

 

※④…韓国でタマムシが天然記念物の指定されたのは2008年のこと。

 

オカムラ

天然記念物なんですか!  じゃあ日本でいうところのトキとかオオサンショウウオとかカモシカとか、ああいう動物と同じレベルで希少ってことですか? 

 

タマムシ博士

そう。だから複製品を作る時に日本でタマムシを集めようとしたわけ。ところがこれが思うよういかなかった。タマムシが集まらなかったみたいで、計画が一時休止になってね。

それで、タマムシを人工飼育している僕のことをどこからか知ったんだろうね。2005年に韓国から「タマムシを譲ってほしい」って電話があったの。その後に分厚い手紙も届いてた。その時は(韓国でタマムシは)天然記念物じゃなくて保護虫だったんだけどね。

 

オカムラ

それで、譲ったんですか?

 

タマムシ博士

1000匹無償で譲った!

 

オカムラ

えぇっ!?  1000匹も!?  じゃあ、複製品に使われているタマムシは芦澤さんが育てたタマムシなんですか?

 

タマムシ博士

そう。全部じゃないけどね。玉虫馬具の複製にはタマムシ3000匹分必要だというから、「役に立てるなら」と標本にして保存していたタマムシを1000匹提供したわけ。

 

 

オカムラ

さっき聞いた話だと、1年に成虫になるのは100~300匹って言ってたから、芦澤さんがタマムシを1000匹集めるのには何年もかかったはずですよね。

それを無償で提供するなんて、めちゃくちゃ太っ腹じゃないですか。「売って儲けてやろう!  」とは思わなかったんですか?

 

タマムシ博士

無償じゃないと意味がないと思ったんだよね。

 

オカムラ

意味?  どんな意味ですか?

 

タマムシ博士

う~ん・・・あんまり深く考えてなかった。ハッハッハ!

 

オカムラ

考えてなかったんですか(笑)  良い人過ぎますよ!  玉虫馬具を複製しようとしていた韓国の人たちからすれば、芦澤さんは救世主だったんでしょうね。

 

タマムシ博士

複製品は2006年に完成してね、慶州博物館でお披露目の除幕式をやったわけ。そこへ招待されてね、幕を引かせてもらった。ハハハ!

それから縁ができて、慶州の昆虫博物館からタマムシの飼い方を教えてと言われて指導したり、何回か韓国へ行ったの。

 

オカムラ

芦澤さんが無償でタマムシを提供したからこそ生まれた縁だったのかもしれませんね。

 

1500年の時を超え、タマムシで日韓をつなぐ

 

 

タマムシ博士

さっきも言ったけど、韓国の玉虫馬具は約1500年前のもので、日本の玉虫厨子は約1400年前に作られたものだと言われているわけ。玉虫馬具の方が100年ほど古いらしいんだ。

 

オカムラ

はい。

 

タマムシ博士

1500年前は寒冷期で今よりも気温が低かったとされているから、その当時、韓国にタマムシがたくさん生息してるとは考えにくいわけ。

 

オカムラ

なるほど。ということは1500年前の玉虫馬具に使われてたタマムシって…

 

タマムシ博士

そう!  玉虫馬具に使われていたタマムシは日本のヤマトタマムシだと考えるのが妥当というわけ。当時、新羅と日本は交易が盛んだったから、日本からタマムシを持ち帰ったのかもしれないんだ。

 

オカムラ

へぇー。

 

玉虫馬具のアップ。

 

タマムシ博士

それとね、玉虫馬具と玉虫厨子は同じ技法で作られていて、両方とも唐草模様の透かし金具の下にタマムシの羽が敷き詰められてるんだ。馬具が作られた100年後に玉虫厨子が作られたわけだから、その間に韓国から日本へ海を越えて文化の伝来があったのかもしれないと考えられるわけ。

 

オカムラ

うわぁ、そう考えるとすごい壮大な話ですね。

 

タマムシ博士

タマムシが紡ぐ日韓歴史ロマン!  と、こういうわけ。ハッハッハ!

 

オカムラ

…っていうかちょっと待ってください。じゃあ芦澤さんがタマムシを韓国に提供してしたのって、その再現というか、『1500年の時を超えて、日本と韓国をタマムシで再び繋いだ』ってことですか?

 

 

 

タマムシ博士

・・・

 

オカムラ

・・・

 

 

タマムシ博士

そう! すごいでしょ?   ハッハッハ!

 

オカムラ

ハッハッハ! すごすぎますよ!  奇跡ですよ!

 

タマムシ博士、映画に出る

 

 

タマムシ博士

韓国で玉虫馬具の複製が作られていたのと同時期に、偶然にも日本でも玉虫厨子の複製が作られてたんだ。

 

オカムラ

シンクロニシティってやつだ。

 

タマムシ博士

玉虫厨子の複製品の制作過程を「平成プロジェクト」って制作会社がドキュメンタリー映画にしててね。今度は「海峡をつなぐ光」って映画を撮りたいっていうわけ。そこにDVDがあるんだけどね。

 

 

オカムラ

これはどんな映画なんですか?

 

タマムシ博士

玉虫厨子と玉虫馬具の複製を作るそれぞれの現場を取材して、タマムシが結ぶ日韓文化交流の歴史に迫る、といった内容。

 

 

オカムラ

(DVDのパッケージ裏を見て)芦澤さんの名前がある!  しかも三國連太郎さんと名前が並んでるじゃないですか(笑)  ってことは芦澤さん出てるんですか?

 

タマムシ博士

うん出てる。この映画は成虫になったタマムシが木から出てくるところから始まるんだけどね。僕の家で撮影したの。(タマムシが)出てくるまで数日かかるかもしれないですよ、なんて話をしてたんだけど、運良く撮影を始めてすぐ出てきてくれてね。

 

映画冒頭のシーンを別カメラで撮影した映像がこちら。

 

DVDを借りて見てみると、芦澤さんがバッチリ出演していた。

 

タマムシ博士

「海峡をつなぐ光」はね、藤枝で先行上映会をやったんだ。

 

オカムラ

タマムシを通じて国際交流したり、映画に出演したり、そんなことってあるんですね。

 

タマムシ博士

あるんだよ。ハッハッハ!

 

他にもタマムシ博士の活動は新聞やテレビなどさまざまなメディアで取り上げられています。詳しくはこちら → タマムシ研究所HP

 

中には糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」から取材を受けたりもしています。  →  タマムシに会いたい

 

趣味が高じて・・・作っちゃった

 

取材からしばらくして…タマムシ博士から「『ふれあいタマムシ展』を開催するので良かったら来て」と連絡がありました。

 

会場の藤ノ瀬会館。中へ入ってみると、

 

海外のタマムシ数百匹を使って作ったという巨大タマムシに出迎えられました。

インパクトが強すぎる!

 

タマムシアクセサリーの展示販売の他、

 

目玉となっていたのは、タマムシ100匹を放し飼いにし、手に取って観察することができる「タマムシふれあい体験小屋」。子どもたちは初めて見るタマムシに興味津々でした。

 

太古から人を魅了して止まないタマムシ。タマムシ展には、子ども連れの家族から、大学生、玉虫愛好会に所属している年配の方々など、老若男女が集まっていました。

タマムシ博士から聞いた話によると、はるばる北海道から「タマムシを見たい! 」と来てくれた虫好きの少年や、(北海道にタマムシは生息していない)韓国、フランスと海外の方も来てくれたのだとか。

 

そして僕は、会場に鎮座している「あるもの」に気付いてしまったのです。

 

 

オカムラ

芦澤さん!  これって・・・

 

タマムシ博士

ハハッ!  作っちゃった。

 

 

オカムラ

玉虫厨子じゃないですか!!!

 

タマムシ博士

本物の3分の1の大きさだけどね。 ふたつ作って、ひとつは法隆寺に寄付した。

 

この日、タマムシ博士はごきげんで、頭にタマムシを乗せて、「あっ!タマムシ」なんて、しょんないダジャレを言っていました。

 

タマムシは幸運を呼ぶ虫だと言われています。幸せそうなタマムシ博士を見ていると、そう信じざるを得ません。

 

僕は、このちょっと変わったおじいさんが大好きです。

名称タマムシの里・玉虫工房・玉虫研究所
ジャンルショップ・体験工房
主なサービス内容タマムシアクセサリーの販売・タマムシアクセサリー作り体験
住所〒 426-0034 藤枝市駅前3丁目9-11
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お問い合わせ先電話&FAX:054-644-9030 携帯電話 :090-1743-9278(芦澤)
営業時間9:00〜17:00
定休日月曜日・祝日
駐車場なし(藤枝駅周辺の有料駐車場利用推奨)
交通アクセス藤枝駅徒歩から5分
ホームページhttp://www.geocities.jp/tamamushiyatama

投稿者プロフィール

オカムラナオト
オカムラナオト
静岡県藤枝市在住。ド・コ・ダの頼りない編集長。
人生に迷い、自転車で日本一周したことがある。現在も絶賛迷走中。
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